【医業経営ニュース】Vol.108「2026年度診療報酬改定レポート4ー賃上げ・処遇改善(その1)ー」
8月21日に「令和7年度第9回入院・外来医療等の調査・評価分科会」において、賃上げ・処遇改善(その1)として、令和4年度診療報酬改定において新設された看護職員処遇改善評価料や、令和6年度診療報酬改定において新設されたベースアップ評価料等について議論されました。
- ベースアップ評価料について
ベースアップ評価料は、他業種に比べ、賃金水準が低い医療従事者に対して、賃上げ促進と医療人材の確保・定着を目的として新設されました。基本的な方針として、医療機関や事業所の過去の実績をベースにしつつ、ベースアップ評価料と賃上げ促進税制の活用をして令和6年度に+2.5%、令和7年度に+2.0%のベースアップを実施し、定期昇給なども合わせて昨年を超える賃上げの実現を目指すこととされております。
出典:令和7年8月21日 中医協 (令和7年度第9回)入院・外来医療等の調査・評価分科会
また、ベースアップ評価料は、対象職種に対して賃上げを実施するための評価となっており、①外来・在宅医療の患者に係る評価、訪問看護ステーションの利用者に係る評価として外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、更に上乗せ評価として②入院患者に係る評価として入院ベースアップ評価料若しくは外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)があります。
算定要件には、ベースアップ評価料として受け取った報酬がきちんと配分されているか、前年度より職員の賃金が改善しているか等、計画書と報告書の作成が求められております。
出典:令和7年8月21日 中医協 (令和7年度第9回)入院・外来医療等の調査・評価分科会
ベースアップ評価料の取得状況は、病院では約9割取得している一方で、診療所や訪問看護ステーションでは約4割にとどまります。取得していない病院では公立病院や医療法人(社会医療法人を含まない)、許可病床数100床未満の病院が多く、取得しない理由として「届出手続きの煩雑さ」が最も多く挙げられています。
算定要件では、賃金改善計画書や実績報告書の作成・提出が必要であり、煩雑な手続きが取得の障壁となっています。今後は要件の簡素化が取得促進に向けて重要です。
出典:令和7年8月21日 中医協 (令和7年度第9回)入院・外来医療等の調査・評価分科会
また、『看護職員処遇改善評価料』はコロナ対応に積極的な救急病院の看護職員の賃上げを目的に令和2年度に創設されました。ベースアップ評価料と同様に「処遇改善」を目指すものであり、届出に必要な計画書や報告書が重複するため、統合による事務負担軽減の意見も挙げられました。一方で趣旨の違いから統合は慎重にすべきとする意見やコロナ関連の特例終了に伴い廃止すべきとの指摘もありました。今後の中医協において統合・併存・廃止のいずれかを判断することになりそうです。
医療従事者の賃金水準は他産業と比べ低く、給与の引き上げが不十分であることが流出リスクにつながっています。このため、ベースアップ評価料や看護職員処遇改善評価料の見直しだけでなく、基本診療料の引き上げなど柔軟な財源確保が不可欠です。