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【医業経営ニュース】 Vol.49「保険医療機関等の指導・監査等について ③個別指導」 

前回の集団的個別指導に関する解説に続き、今回は個別指導について解説します。

個別指導の概要
個別指導は、保険診療の取扱い、診療報酬の請求等の周知徹底を目的に、指導対象レセプトをもとに個別面接方式で行われ、改善報告書の提出や診療報酬の自主返還が求められます。

個別指導 当日までの流れ(下記①~③)

① 指導対象医療機関の選定 …対象は、集団的個別指導を受けた保険医療機関のうち、翌年度の実績においても、高点数に該当する上位4%の範囲に位置する保険医療機関となります。ただし、以下に該当する保険医療機関がある場合は、そちらが優先されます。

・支払基金等、保険者、被保険者等からの情報で、指導が必要とされた保険医療機関
個別指導で「再指導」又は「経過観察」であって、改善が認められない保険医療機関
監査の結果、戒告又は注意を受けた保険医療機関
集団的個別指導の結果、指導対象となった大部分のレセプトについて、適正を欠くものが認められた保険医療機関
・正当な理由がなく集団的個別指導を拒否した保険医療機関
・その他、特に個別指導が必要と認められる保険医療機関

 

➁指導の実施通知(事前提出書類・当日準備書類)…指導日はその一ヶ月前を目途として通知されます。通知書には、事前提出書類及び当日準備書類が記載してあり、施設基準の届出状況等により内容が異なります。

事前提出書類の一例 当日準備書類の一例
診察業務及び診療報酬請求事務の手順
・保険外負担項目と徴収額一覧表
・領収証・明細書の写し、外出・外泊許可書用紙、付き添い許可書用紙及び処方箋用紙
・保険医療機関の現況
対象患者のカルテ及び関係書類等(初診時からの全ての記録)
・自家診療分のカルテ等
・対象患者の院内処方箋
・酸素の購入・納品伝票
・支払機関からの返戻・増減点通知書綴

 

③指導対象レセプトの通知(指導日の1週間前及び前日 合計10~30人分)…個別指導の対象となるレセプトとして、下記のようなレセプトが事前にFAX通知されます。

高点数/傷病名が多い(常時8以上)/投薬数が多い/実日数が多い/疑い病名やレセプト病名と思われる傷病名が多い/時間外・休日加算を算定/医学管理料を算定/在宅医療を算定/投薬・注射・検査が画一的/医師・従業員向け 等

 

個別指導 当日の流れ(下記④~➅)

④ 出席者確認 …開設者(又はこれに代わる者)及び管理者の出席が原則であり、その他必要に応じ、保険医、診療報酬請求事務担当者、看護担当者等の出席が求められる場合もあります。なお、指導結果説明(➅)の記録係を決めておくことをお勧めします。

⑤ 指導 …面接懇談方式により、指導月以前の連続した2か月分のレセプトに基づく関係書類等が閲覧されます。指導時間は原則として診療所 2時間、病院 3時間(新規個別指導の場合、診療所 1時間、病院 2時間)です。

➅ 指導結果説明 …指導終了後に指導結果の説明が行われます。指導結果は概ね妥当から要監査までの4段階に分けられますが、要監査は指導が中止されるレベルの不適正評価となります。

区分 評価 指導後の措置
概ね妥当 概ね妥当な診療内容、及び診療報酬の請求が適切である (特になし)
経過観察 適正を欠く部分が認められるものの程度が軽微で、診療担当者等の理解も十分得られており、かつ改善が期待できる 数か月間、レセプトその他の提出書類により改善状況を確認、改善が認められない場合は次年度に個別指導
再指導 診療内容又は診療報酬の請求に関し、適正を欠く部分が認められ、再度指導を行わなければ改善状況が判断できない 次年度に個別指導/不正又は不当が疑われ、患者から受療状況等の聴取が必要な場合は患者調査を実施
要監査 個別指導が中止され、監査が行われる

 

個別指導後の措置(改善報告及び自主返還)
個別指導実施から原則1か月以内に、当日の説明内容を記載した指摘事項と、算定要件を満たしていない場合に診療報酬の返還を求める返還事項が文書にて通知されます。
指摘事項については、通知から1か月以内の改善報告書の提出が必要です。返還事項については、指導対象のレセプトのうち、返還が生じるもの及び返還事項に係る全患者の指導月前1年分のレセプトについて自主点検を行った上で、「返還同意書」等必要な書類の提出が必要です(診療所は通知から1か月以内、病院は通知から2か月以内、新規個別指導の場合、指導対象となったレセプトのみの返還)。

個別指導に向けた対策
個別指導の指導対象となるレセプトは、1週間前と前日に分けて通知される(③参照)ため、通知があってからの準備ではなく、日ごろから医科点数表に則った算定をすることが自主返還を防ぐ対策となります。個別指導で指摘が多いのが、医学管理料の指導内容等の記載に関するものです。実際には指導していてもカルテにその内容が記載されていなければ、厚生局から「指導していない」と見なされ自主返還が要求されます。

指摘事項の例 左記指摘事項への対策例
・特定疾患療養管理料について、治療計画に基づいた服薬、運動、栄養等の療養上の管理内容の要点の診療録への記載が画一的、不十分、又は記載がない
・特定薬剤治療管理料について、薬剤の血中濃度、治療計画の要点の診療録への記載が不十分又は記載がない
指導内容の記載漏れ・指導内容の画一化を防ぐための下記の工夫
・テンプレート(紙カルテであればハンコ、電子カルテであれば算定時に記載事項の入力が求められる設定にする等)の作成
・複数種類の指導内容の用意

個別指導における主な指摘事項は、各地方厚生局ホームページにおいて参照可能です。

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