【医業経営ニュース】 Vol.50「保険医療機関等の指導・監査等について ④監査」
■監査の概要
監査は、行政側が、下記のような基準に基づく事由が個別指導において見られた医療機関等に対して、診療報酬上の不正等に関する事実関係の把握を目的として強制的に実施されます。その結果によって、取消等の行政上の措置や、返還金等の経済上の措置がなされます。
(1)診療内容に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき (2)診療報酬の請求に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき (3)度重なる個別指導によっても診療内容又は診療報酬の請求に改善が見られないとき (4)正当な理由がなく個別指導を拒否したとき |
■監査実施の流れ(下記①~③)
監査の実施は、個別指導(前号参照)の場面において判断が行われます。個別指導での指摘事項が改善されない、または不正や不当が疑われると判断される場合に、以下の流れで実施されます。
①厚生局による事前調査
厚生局は、監査対象医療機関の選定をするにあたり、レセプトによる書面調査を行うとともに、必要と認められる場合は患者本人に対し直接面談により聞き取りを行う患者調査を行います。患者調査では実際の診療内容とレセプトの食い違いがないかを確認します。
➁監査決定(通知)
個別指導の評価として要監査と決定された後、監査の実施日は1週間~10日前に通知されます。ただし、緊急に監査を実施する必要がある場合等は、個別指導の当日に監査実施通知が行われる場合もあります。
③監査実施
医療機関の開設者及び管理者の出席が求められます。その他にも必要に応じて保険医、診療報酬請求事務担当者、看護担当者等の出席を求められることがあります。監査では対象となるレセプトに基づき、面談方式により診療内容及び診療報酬請求等に係る聴き取りが行われます。
■監査後の措置(行政上のもの)
監査後の措置は、“取消” “戒告” “注意” 並びに“行政措置なし”に区分されます。
措置の区分 | 判断基準※(以下のうち1つでも該当した場合) | |
取消 | ・保険医療機関の指定取消又は保険医の登録取消の行政処分 ・原則として5年の間は再指定は行われない |
1. 故意に不正又は不当な診療を行ったもの 2. 故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの 3. 重大な過失により、不正又は不当な診療をしばしば行ったもの 4. 重大な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの |
戒告 | ・過誤についての指摘/指導 (今後の保険診療の内容又は請求の適正化を期するもの) ※“注意”は“戒告”よりも程度が軽い |
1. 重大な過失により、不正又は不当な診療を行ったもの 2. 重大な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの 3. 軽微な過失により、不正又は不当な診療をしばしば行ったもの 4. 軽微な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったもの |
注意 | 1. 軽微な過失により、不正又は不当な診療を行ったもの 2. 軽微な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの |
※ “不正”… 詐欺等の不法行為に当たるようなもの
※ “不当”… 算定要件を満たさない(診療録に指導内容の記載が不十分である等)もの
※ “しばしば”… 1回の監査において件数からみてしばしば事故のあった場合、及び1回の監査における事故がしばしばなくとも監査を受けた際の事故がその後数回の監査にあって同様の事故が改められない場合
■監査後の措置(経済上)
監査において不正又は不当として指摘されたものを含めた全患者のレセプトについて、監査における返還事項に関し、保険医療機関は自主点検を行います。返還については、原則として監査を行った月の前月から5年前以降分について求められます。
■監査の対策
前述した通り、監査は原則として個別指導を実施し、指摘事項について改善が見られない場合や不正や不当が疑われる場合に実施されます。監査実施となると、行政上の措置や経済上の措置は免れることは困難です。よって、監査の対象にならないよう、個別指導対策と同様に日ごろから医科点数表に則った算定をすることが最も重要な対策となります。