【医業経営ニュース】Vol.109「高齢者の入院に関する指標について―地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟―」
2025年9月11日に開催された令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、高齢者の入院に関する指標として地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟について報告がありましたので解説します。
■ 届出状況と病棟機能
地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟について、2024年9月のDPCデータ分析から現状が明らかになりました。地域包括医療病棟は全国で67施設、地域包括ケア病棟・入院医療管理料は延べ2,783施設が届出を行っており、その約3分の2は急性期一般入院料を併設しています。つまり、多くの施設では急性期と包括期の病棟が組み合わされ、一体的に運用されている状況です。
出典…令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会 入―1参考
■患者像
患者像をみると、両病棟ともに70歳以上の高齢者が多く、要介護度が高く認知症を有する患者の割合も大きいことが特徴です。地域包括医療病棟では医師による診察や処置の必要性が比較的高く、急性期一般2~3に近い患者が多いのに対し、地域包括ケア病棟では医師の関与は少なめながら、看護師による頻回のケアを必要とする患者が多く見られました。いずれも、高齢で多疾患を抱え、日常生活に支援が必要な患者を中心に受け入れているといえます。
出典…令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会 入―1参考
■入院疾患と在院日数
入院疾患は両病棟とも肺炎や誤嚥性肺炎、骨折、心不全、脳梗塞などが多く、上位30疾患で全体の約6割を占めています。地域包括医療病棟では外科系疾患が多く、手術や処置に伴う医療資源投入が大きいため請求点数も高くなる傾向があります。一方で、地域包括ケア病棟は患者構成が比較的均質で、請求点数のばらつきが少ないことが確認されています。
出典…令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会 入―1参考
在院日数については、高齢であるほど、また入院時のADLが低い、B項目点数が高いほど長くなる傾向が示されました。救急搬送患者は総在院日数が長い一方で、直接地域包括ケア病棟に入棟した救急患者では比較的軽症例が多く、在院日数が短い場合もあることが分かっています。
出典…令和7年度第11回入院・外来医療等の調査・評価分科会 入―1参考
以上の分析から、地域包括医療病棟は高齢者医療の中で、急性期直後の医療的ケアを必要とする患者を受け入れる「医療度の高い包括期病棟」としての役割を担い、地域包括ケア病棟はより幅広い高齢患者を支える「在宅復帰支援の場」として機能していると整理できます。今後は在院日数や救急搬送件数だけでなく、ADLの改善や在宅復帰率といったアウトカム指標を用いて、病棟機能が適切に発揮されているかを示していくことが重要となります。
制度的にも機能的にも発展途上にあるため、地域包括医療病棟のあり方については、今後の議論を注視していく必要があります。